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存在に関する証明責任(立証責任、挙証責任ともいう。)を負っている。」と言うことであるが、一般に訴訟において証明責任をどちらの当事者が負っているかは非常に大きな問題となる。なぜならば、証明責任を負っているということは、相手に過失がないことが明らかな場合は勿論、相手に過失があったかどうかが明らかではない場合にも自らの請求が認められないことを意味し、従って、相手の過失を証明することが難しければ難しいほど、自らが敗訴する可能性が高くなる(裁判上、不利な地位に置かれている)ことに他ならないからである。

 

実は、被害者の側で製造業者の過失を証明することは、決して簡単なことではない。現代社会においては、科学技術の進歩により、製品は極めて高度化・複雑化しており、一般消費者が製品内容を熟知した上で、複雑な設計・製造過程における製造業者の「過失」を証明することは非常に困難であるというのが実態である、加えて、製造業者の過失を証明するために必要な情報(設計図、品質管理記録、安全性検査結果など)が全て企業内部に存在し、被害者がそれを入手すること自体容易ではないこと(証拠の偏在)、典型的なPL訴訟においては、原告(消費者)と被告(メーカー)との間には製品に関する専門的知識、資金力、人的資源などの面において大きな格差があることも珍しくないことなどから、このように力関係に大きな差がある当事者間の争いに、明治時代に制定された民法の規定をそのまま適用し、弱い消費者を不利な地位に置いて裁判を進めていくことが、果たして公平と言えるのかという疑問が指摘されるようになった。その解決策として、欠陥責任に基づくPL法制定の必要性が主張されるようになったのである。

 

(参考)
民法第415条(債務不履行による損害賠償責任)
「債務者カ其債務ノ本旨ニ従ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債権者ハ其損害ノ賠償ヲ求スルコトヲ得債務者ノ責ニ帰スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ」
民法第709条(不法行為責任)
「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」

 

2.2 PL法のポイント

(1)PL法の目的
第一条(目的)
この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者なの損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 

 

 

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